過去と向き合う

自分を知ることは非常に重要で、その理解が深いものであるほど、行動に節度や合理性が伴う。

通常、このような自己分析を行う機会は少ない。

自分のことをよく知っているという思い込みと、必要性を感じないことから、毎日舞い込んでくる仕事や課題の解決を優先するからだ。

自分の過去にじっくり向き合う暇などない。

その忙しさの中で自分を振り返らず、思い込みの自分像で生きていたままでは、それは非効率的な人生になっているかもしれない。

誰にでも、得意や不得意な分野がある。

複雑な社会を生きていく上で、得意分野を生かしていくことは効率的な人生運営につながるが、不得意分野を仕事にしていては、ストレスを抱えやすい。

例えば仕事で言えば、苦手なことを職業にしていれば、一日のうちの大半を過ごす会社という環境は過ごす時間が多くなるほど疲労を抱えやすい。

正確に得意なことを把握できていれば、仕事に活かしたり、仕事以外の場面でも得意な点で誰かを助けたり感動を伝えることができたりして、より社会へ貢献ができる。

このような人生を送る為にも、見過ごしがちな自己分析による正確な得意と不得意の把握は大切な自己啓発である。

 

得意・不得意の正確な把握ができているか

人には感情や行動の癖や、パターンがある。

規則に厳格かルーズなのか、自罰的か他罰的か、自己中心的か他者優先的か…など。

人によって感じ方、考え方はそれぞれ異なる。

得意なもの、好きなものにはストレスなく着手でき、積極的な姿勢で取り組んでいたり、趣味にしていたりする。

苦手なもの、嫌いなものにはなかなか手を付けられず、後回しにしていたり、この点を指摘されると言い訳をしたり、逆上したりする。

これらの得意・不得意は本人が認識できているものと、認識できていないものに分けられる。

つまり、本人も気づいていない、得意や不得意の見落としや誤解をしている可能性がある。

 

例えば本人の思い込みによって得意・不得意を誤解しているケースや正確な認識ができていない場合、本人も無自覚に特定の状況を回避していたりするなど、特殊な行動パターンに表れる。

具体的には、得意と思っているが、それほど実績を上げることができていなかったり、不得意・苦手だと思っているが、意外に続けることができていたりする。

このように感じ方や行動のパターンを洗い出していくと、自分の輪郭がより明確になっていく。

これらのパターンを整理していけば、より正確な自分の得意・不得意を把握することができ、適職との出会いを助けたり、的確な目標を掲げることができたり、得意分野を人生の武器にして生きていくことができる。

 

・見落としがちな得意・不得意を探るヒント

本人も認識できていない、得意・不得意は次の質問への回答に隠れている。

感情のパターンや行動のパターンを思い出そう。

・無意識になぜか繰り返してしまうことはないか。

・ずっと続けている趣味や仕事はどのようなものか。

・率先してやれることはどういうことだろうか。

・逆にどうしても避けていることはないだろうか。

・これまで、何を成し遂げてきたのか。なぜそれを目標に立てたのか。

・どの選択肢を選び、どの選択肢を捨てたのか。

・これからどのような方針で人生での決断の方針にするべきと考えているか。

 

これらの回答にどのような規則性があるか。どのような言葉でカテゴライズできるか。

これをひたすら思い出し、整理してみよう。

 

ルーツを理解する

どのような結果もその原因は過去にある。

例えば、完璧主義に苦しむ人は、過去の家庭教育において厳しすぎる基準で親から指導があった可能性がある。

家庭での教育はその後の人生に強烈な影響を与え続ける。

人は生まれたときから親からの洗脳にさらされる。

生まれたばかりの子供は、その柔らかい頭にどんどん親の価値観がインストールされていく。

無力な子供たちはそれに抵抗することができない。親の機嫌を取り続けなければ生命を維持できないからだ。

こうして親の機嫌を取ることで身についてしまった価値観というものは、その人だけの個人的なものに過ぎないが絶対的な価値観になる。これがその人の人生を制限する。

しかし、身についてしまった性格、不得意なことは、過去にそのルーツがあったと理解できた時、それまで持っていた緊張が解ける瞬間がある。

幼少の無力な時代に仕方なく身についてしまったのだ、という不可抗力に対する理解を示すことができたとき、いい意味での諦めをもたらし、高すぎた自分への判定基準を下げることになったり、気持ちが楽になったり、癒されたりする。許せない自分を許すことができたりもする。

こうして現在の自分の行動パターンや思考パターンのルーツを理解することができる。

 

自分の過去を探ることは、非常に重要である。

しかし、ほぼ全員がこの有効性を感じない自己分析というものに取りかかることもしない。

それどころか、過去を思い出すこと自体、苦しい思いをする。

しかし、効果は高い。

上述のような癒しをもたらしたり、一貫した価値観に基づく自分の人生を再発見できたりする。

また、過去を思い出していくうちに普段は思い出せない記憶を掘り起こすことになり、意外な発見に出会うことがある。

しかしそのどれもこれもが、結局は自分の過去を振り返らなければとたどり着けない領域にある。

過去を思い出すことは、自分の再発見につながる有効な手段なのだ。

 

自分の起源、思い込みの起源を探すヒント

ヒント①

親の教育方針はどうであったか。

何事にも厳しかったのか、特定の何かに関して厳しかったのか。

どのようなふるまいを期待していたか。

 

ヒント②

祖父母の教育方針はどのようなものだったのか。

遺伝だけではなく、その生活習慣、哲学といったものは、継承されていることが多い。

 

ヒント③

付き合っている友達からの影響も大きい。

どのような友達と付き合っていたのか。どのような言葉使いで、どのような会話をしていたのか。

 

過去を思い出すコツ

①メモを取る。

メモを取ることは簡単で効果が少ないように感じられるが、実は侮れない。

人生を変えるほど強力なツールである。

メモを取ること自体は、実は簡単だ。

例えば、買い物に行く前に買うべきものをメモしたりする経験はあるだろう。

誰もができる簡単な作業だ。

しかし、自分と向き合い、人生を振り返り、言葉にならないことを言語化する。

または、頭に浮かぶことばを書き出すことに心理的ハードルがありすぎて、できないことがある。

こうして書きだした言葉を見ると、驚くほど気持ちと頭の整理に役立つことがわかる。

 

悩んでいる人が自分の気持ちをノートに書きだしただけで、気持ちが落ち着き、楽になったという報告をたくさん受けている。私も実践している。

「とにかく書き出す」という手段は、とても効果があるので取り組むべき方法である。

メモを取るコツは、思い出した時に書けるときに書くことだ。

当然、メモはケータイのメモ機能でもいいし、身近にある紙面でも構わない。

一見簡単な、メモを取る作業でさえ、できるところからやればいい。

●参考リンク:とにかく書けばなんとかなる!人生を救う「メモ」の絶大な効果

 

②記憶の辿り方

記憶は芋づる式である。

何かを思い出したらその周辺の記憶も思い出しやすくなる。

これを繰り返していくと、普段は思い出せないような記憶にたどり着く。

いつもは忘れていた過去の記憶を思い出し、新鮮な自分を発見することもある。

家族のルーツ、親の教育のポリシー、友達に怒られて以後どんなことに気を付けるようになったのか。通常思い出せなかったことも周囲から攻めていけば、思い出せるようになる。

そこに今のあなたを作る要因があるのかもしれない。

 

まとめ

我々は日々、忙しく、当たり前に感じていることをわざわざ振り返ることはない。

自分についての分析は最も見落としがちな作業である。

だからこそ、過去を振り返る自己分析は効果が高い。

過去を振り返れば振り返るほど、発見があったり、将来の目標をより強化することができたり、苦手なものに理解を示すことができる。

各個人が抱えている心理的な課題というものは、そのルーツは必ず過去にあり、それを知ることで理解を得ることができる。そして、過去にこんな経験があったのだから、今の自分がこうなってしまったのも仕方がない、といういい意味での諦めが緊張を解き、癒しを生むのだ。

落ち着いて自分の過去を振り返るという秘密の儀式は、冷静さを取り戻し、苦しみを軽減する効果が期待できる。

昔から自分探しというキーワードを目にしたり耳にすることがあるが、本当の自分に出会うことが目的なら、それは自分の外側に求めるのではなく、また無駄に海外旅行に出かけるのではなく、自分の内側に求めるべきなのである。

しかも特別な準備も費用も必要ない。紙と鉛筆があれば十分だ。