課題の解決や目標の達成には、それに取りかかったときの高いモチベーションを維持したまま、解決に至るまで走り続けることが理想だ。
それがいつも可能であればきっとどんな夢や目標でも叶えられるだろう。
しかし現実には途中で逃げたくなるし、諦めてしまったりする。
諦めてしまえば失敗に終わり、自信を無くし、傷を負う。
モチベーションの維持のためには、常に頭をよぎる失敗するかもしれないという不安を振り払い続けなければならない。
成功する瞬間まではモチベーション維持の戦いとも言える。
成功の必要条件である、モチベーションの維持にはどうしたらいいのだろうか。
成果主義とモチベーション
現代日本の成果主義社会において、評価は結果がすべてである。
途中であきらめたり、逃げたりしたものに対する評価は低い。
努力が足りない、やる気が感じられない、意思が弱い、などと取り組む姿勢を非難される。
目標の達成には、モチベーションが大事だと言われている。
どんな歴史的偉業もリーダーの高いモチベーションによって導かれたものだ。
目標達成の途中に遭遇する失敗や困難に屈し、諦めてしまえばそこで計画はストップする。
このような難局を乗り越えるにはモチベーションが必要なのだ。
つまり我々が実際に直面する悩みや課題に対しては、それを成功させるのか失敗に終わらせるかの分岐点は、モチベーションが維持されるかどうかにかかっている。
モチベーションとは
我々は日々の生活の中では様々な活動を行っている。
朝に目覚めて立ち上がるところから、夜寝るまで行う活動にはエネルギーが要る。
モチベーションとは、これら全ての活動エネルギーの源である。
モチベーションは、いつも一定というわけではない。環境によって変化する。
解決の見込み、課せられた責任の大きさ、あるいは精神状態や体調などによってボリュームが決まる。
例えば、目標の達成に至らず状況が停滞しているときに、解決の糸口を見つけたり初心を思い出し、自分を奮い立たせた経験はないだろうか。
まあるいは、目標の達成に向けて順調に進んでいても、目的や意義を見失ったり体調を崩してしまい、思考や行動が消極的になったことは無いだろうか。
このように、モチベーションの高さは、個人の人格や能力の優劣によって決まるものではない。
ましてや、やる気や意志の問題ではない。
しかも、モチベーションは、活動エネルギーの供給源であるという性質上、試練を乗り越えようとするときは、それが達成されるまで一定の高さを維持しなければならない。
モチベーション低下は、活動エネルギーの低下を招き、状況の停滞または悪化を招くからだ。
諦めのメカニズム
我々は、やりがいや責任感を適度に感じているとき、エネルギッシュに活動を続けることができる。
がんばろう、乗り越えよう、逃げないぞ、といった前向きな気持ちを持ち続けることができるのは、モチベーションから連続的にエネルギーが供給されているからである。
この前向きな気持ちを持つことは、それだけでもエネルギーを使う。
つまり、前向きな気持ちを持ち続けることはエネルギーを消耗し続けることになる。
しかも、目標が高いものであるほどそのエネルギー消費量は大きいため、高い目標に向き合い続けるということは常時、大量のエネルギーを消費しているのである。
つまり、大きな目標に対して前向きな気持ちを維持するためには、大量のエネルギー消費に負けない、強力なモチベーションが必要になる。
・モチベーションの低下
ところが、モチベーションは様々な理由で貧弱化する。
例えば、期限が迫ってくる、解決の糸口がつかめない、体調を崩したなどの理由により、モチベーションが低下する。
こうして貧弱化したモチベーションから供給される活動エネルギーは少なくなってしまう。
この状態が続くと、活動の持続は難しくなる。
活動に必要なエネルギーを確保することが難しくなることで、前向きに考えることが困難になる。
代わりにネガティブな思考がだんだんと増えてくる。
すると、期限の延期の可能性を探ったり、目標達成ラインを下げようとしたり、誰かに責任を押し付けようとしたり、などと現実逃避的思考が巡り出す。
・活動エネルギーの枯渇
モチベーションの低下を抑えることができず、そこから供給されるはずのエネルギーが減少を続けると、ついに活動エネルギーが枯渇する。
活動エネルギーの枯渇は、活動の停止を意味する。
前向きな考えがなくなり、頭に思い浮かぶのは諦めや逃避で占められる。
これまでのどんな成果にも意味を感じられず、目標達成の意味さえ見失う。
ついに心が折れてしまい、「諦める」という最終決断に至る。
モチベーションの維持のために大切なこと
困難との戦いは、モチベーション維持との戦いでもある。
「いかに諦めないようにするか」が、解決そのものよりも実は重要である。
モチベーションの低下は、課題の難易度と自分のスキルの差が大きい時に発生しやすい。
高すぎる目標はエネルギーの消耗が激しいため、活動エネルギーが枯渇しやすい。
その結果、努力も成果につながりにくい。
期待より成果が小さい状態が繰り返されると、解決の見込みが立たず、プレッシャーが増し、さらにエネルギー消耗が加速する。
この加速するエネルギーの消耗と、無力感がモチベーションを低下させ、弱体化したモチベーションから供給されるエネルギーも減少し、さらに事態は悪化する。
このような負のサイクルを防止するには、獲得する無力感よりも達成感を増やすことができれば良い。
我々のダイエットが続かないのも、英語の勉強が続かないのも達成感より無力感が大きいからだ。
単に、気合と根性、あるいはやる気や努力が足りないのではない。
だからこそ、課題は自分のスキルのちょっと上くらいのもの、が望ましい。
モチベーションが高い人
身の回りの活発な人や業界のトップランナーたちは、高いモチベーションを維持できている。
彼らのスケジュールはいっぱいに詰まっていて、疲れているはずなのだ。
しかし、なぜ、精力的な活動を続けることができるのだろうか。
①好きなものに打ち込んでいる人
好きなものや簡単なものには活動エネルギーは少なくて済むため、集中力が切れにくい。
趣味や興味のあるもの、得意なものに対しては、最後までやり切ることが誰でも可能だ。
ゲームを長時間やり続けることができたり、長時間運転することもできる。
仕事に関しても好きなものであれば寝食を忘れて没頭できるものだ。
②責任感や使命感にせかされている人
責任感や使命感にせかされている人はいつもモチベーションが高い。
責任ある立場になると、仕事に対する使命感が増す。
期待にこたえたいという気持ちや、失敗したときの責任問題を考えると、とても立ち止まってはいられない。
また、仕事に対し目の前の対応だけではなく、家族の未来や世界への貢献など、先を見据えて取り組んでいる人は、モチベーションが維持しやすい。
③無茶な試練に飛び込める人
一方、目標達成の見込みなどを度外視して、困難に飛び込める人が存在する。
理想に近づきたい気持ちが強すぎて、まったく他のことが目に入らないのだ。
言葉が通じない国に留学に行ったり、私財をなげうって新しい商売を始めたりする。
これらの一見非常識な行動は、強烈なモチベーションによってはじめて実現できるものである。
・モチベーションが高い人に共通するもの
モチベーションが高い人は様々な理由に後押しされ、モチベーションを維持することに成功している。
彼らに共通するものがある。
恐怖心だ。
彼らは実行しないこと、諦めることに対して、恐怖を感じている。
今ここでやらなければ後悔することになる。という潜在的な恐怖から必死に逃げている。
その結果が、活発な行動に表れている。
つまり、放置していることよりも、飛び込む方が精神的に楽なのである。
●参考リンク:選択の法則│必ず心理的ハードルが低い選択肢を選ぶ
下がったモチベーションを再び上げる方法
モチベーションの低下は、「諦め」への入り口であり、困難を突破する障害になる。
困難と闘い続けるためには、モチベーションの維持が重要である。
モチベーションの維持とは、低下しがちなモチベーションを常に押し上げる作業に他ならない。
はたして、低下しがちなモチベーションを再び上げるにはどうすればいいのだろうか。
・目標の重要性を確認する
課題に集中するあまり、目標の重要性はないがしろにされがちだ。
そこで、改めて目標の重要性を確認することで、達成の意義や責任感、使命感を思い出すことが出来、モチベーションを回復することができる。
例えば、多くのサラリーマンがつらい仕事に耐えることができるのは、生活資金の調達のため、あるいは家族のため、という気持ちがあるからだ。
今頑張っていることの社会的意義、社会への貢献度、身を削るだけの価値があることを確認できた時、あるいは初心を思い出した時、
再びやる気や元気を取り戻し、逃げ出そうとする自分を必死に引き留めることができる。
逆の考え方もある。
諦めたり逃げ出した時に発生する不都合を想像することで、目的の重要性を確認することができる。
ノルマの達成を諦めることは、会社の売り上げに加担できず、社会への貢献につながらない。
今日の仕事を明日に先送りすることは、明日の仕事量を増やすことになり、さらに苦しい状況に追い込まれる。
このような想像力が働くと、最後の踏ん張りに必要なエネルギーが湧いてくるだろう。
・自分を信じる
努力の割には成果が得られない状態が続くと、悲観的な見方が強くなる。
何もやってない、何もできていない、という過小評価はモチベーションを下げる。
この場合は、自分の実績や状況を見直し、成し遂げるための材料がそろっていることを確認しよう。
これまでの経験と知識、人脈を総動員し、これらを応用すれば不可能ではないということが確信できれば、モチベーションが上がるだろう。
他者と比較することでモチベーションを引き上げる方法もある。
あいつができるなら俺だってできるはず、負けたくない、という気持ちもモチベーションの維持に役立つ。
ライバルを持つと強くなれるのはこのためだ。
要は自信を持てるなら、どんな考え方をしてもよいのだ。
俺はできる!という確信を持ち、その勢いでまた課題と向き合えればそれでいい。
・寝る
課題と真剣に向き合い、あらゆる手段を尽くしても成果につながらない時や、
どんなに気分を切り替えようとしても、前向きになれないという時もある。
・全てを出し切って、もう何も出せるものがない。
・全身が疲れ切り、脳は暴走か停止してしまい、まともに考えることもできない。
そんなの時は、これ以上のエネルギーの消耗を停めることだ。
思考も運動もやめ、帰って寝ること。
すると不思議なことに、明日は今日より少し元気を取り戻している。
働かない頭を無理矢理働かせようとしても、効率が悪い。
むしろ誤った判断をする可能性もある。
脳がネガティブな思考に占拠されたり、まともに考えることもできないなら、
脳が休ませてくれ、とサインを出しているのだ。
今日は休むことにしよう。